警泥と石綿

85〜87年頃の話。
当時、お金を持ち合わせていなかった僕らは色んな場所で警泥をやるのがトレンドだった。その中でも毎週のように主戦場としていたのがデパートに併設された立体駐車場だった。立体駐車場は軽く空調が効いてるので夏の暑い時期でも快適に警泥を楽しめるのだ。

ある日、新メンバーで仲の良かった友達がいきなり駐車場の天井を指差してこう言った。『あの天井にこびりついてるやつは有害なんだ、吸ったら死ぬかもしれない』そう冷静に言いながら彼は手で口を覆っていた。彼の衝撃的な一言でみんなのモチベーションが一気に下がり、それ以来警泥はやっていない。それどころか、散々そこで警泥してきた僕らはしばらく恐怖に怯える日々を過ごした。中でも、壁をよじ登って天井を触ったという友達は授業中も真剣に凹んでいた。

政府は76年にアスベストによる健康被害の危険性を認識していたにも関わらず、今頃になってその危険性に対する姿勢に落ち度があったことを認めた。あまりにも遅すぎるし、今さらという気がしてならない。「死ぬかもしれない」と僕らに真顔で忠告してくれた友達の爪の垢を煎じてのませたいぐらいだ。

今思い返しても確かにあの天井には石綿らしきものが剥き出しになっていた。それがアスベストだったのか確証はないけど、もしそうなら潜伏期間を計算すると警泥メンバーは45〜55歳ぐらいに発症する可能性があるというわけだ。また、あのデパートの駐車場を利用していた大勢のお客さんにも発症の可能性はある。今はそうならないことを祈るだけですが、本音は今さらという感じです。

関係ないけど泥警と呼ぶ地域もあるらしいですね。
でも警泥です。